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リバネスユニバーシティー 学長インタビュー 「研究者であり経営者」両輪を回すリーダーが育つ実践場をつくる

2026.04.09

リバネスユニバーシティー 学長インタビュー
「研究者であり経営者」両輪を回すリーダーが育つ実践場をつくる

株式会社リバネス代表取締役社長CCO
井上 浄

博士(薬学)、薬剤師。2002年、大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。博士課程を修了後、北里大学理学部助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教、慶應義塾大学特任准教授を経て、2018年より熊本大学薬学部先端薬学教授、慶應義塾大学薬学部客員教授に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援等に携わる研究者であり経営者。北里大学薬学部客員教授、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部客員教授、経済産業省産業構造審議会委員、文部科学省技術専門審査員、JST START-大学推進型およびスタートアップエコシステム形成支援委員会委員等を務めるとともに、多くのベンチャー企業の立ち上げにも携わり顧問を務める。

リバネスユニバーシティーは「地球貢献型リーダーの育成」を掲げて5年間走ってきた。次世代のリーダーは1組織、1機関で育てられるものではない。これまでに複数の企業・組織と連携し、4つのカレッジ、11のコースを開発し、のべ400人以上が参加してきた。永くアカデミアで研究者として活動し続けながらベンチャーを経営するという両輪を回してきた株式会社リバネス代表取締役社長CCOの井上浄が、2025年、リバネスユニバーシティー学長に就任することとなった。大学など多様な機関との連携による、次なる展開を語る。

アカデミアと超える、という新たな挑戦

 私は、大学の研究室の中で専門性と倫理観を徹底的に学びました。一方で、リバネスを立ち上げるきっかけにもなった学生団体で初めて外の世界で活動した時、私は大学の中では「何かを起こす」ためのプロセスまでは学べていなかったことに気づきました。リバネスで活動を続けてきて改めて、大学で学んだ専門性や倫理観は、間違いなく社会を変える「土台」になると確信しています。しかし自分がその専門知識を持っているだけでは世界は変わりませんでした。世の中に認知されたとしても、その人がその知識の使い方や活かし方がわからなければ事は動きません。結局、研究者自身も「実践」の知識と経験がなければ何も起こせないと気づいたのです。

 科学技術は加速度的に進化しています。しかし、それらを社会課題の解決に応用できる人材が、いま圧倒的に足りていません。課題を知っている人、科学を知っている人、社会のしくみを知っている人など必要な知識を持った人材は分断しており、かつ課題が複雑化する中で、リーダーには圧倒的な発想で未来を構想し、実践できるというかつてないスキル・マインドセット・行動が求められています。今の時代、大学だけでも企業だけでも世界は変えられません。それを可能にするため私は、「アカデミアと越えていく」という挑戦を新たに掲げました。研究と実践、どちらか一方ではなく、両方の知識や行動原理を融合した第三の場所を共に考え、より多くのリーダーが科学技術で社会課題の解決を実現して行ける世界を本気で創りたいと思っています。

強烈な人材同士をつなぐ力が世界を変える

 融合というと2つを平均値にならすようなイメージを持ちがちですが、目指しているのは両方が共存し、かつ増幅するような融合です。先日、それぞれの専門性を極限まで深めた研究者が集まり、「生命とは何か?」というとてつもなく大きな問いを立てて対話をしているチームとディスカッションする機会がありました。非専門家ばかりが集まって議論すると、AIでも出せそうな発想にとどまってしまい、結局何処かで聞いたような話になりがちです。しかし、圧倒的な発想で研究を深めてきた研究者が入ると、100年後の世界観などはその前提と発想の飛び方が全く違ってきます。さらにそこにベンチャー創業者のような強烈な社会課題の解決へのパッションを持った人たちが入ると、「こんな課題を解決し、こんな世界を作る!」というめちゃくちゃ面白い、誰も思いつかない世界観と解決策がでてくる。これこそまさに今までにない知と実践を生むコラボレーションだと強く確信しました。

 今の時代、AIの台頭で誰でも情報にアクセスできるようになり、人間にしかできない非連続な発想で異質なものを自分の中に取り込み、「つなぐ力」の重要性がますます増しています。「つなぐ力:ブリッジコミュニケーション」を発揮し、冒頭でお話したような、分断を超えて事を起こせる人材こそ、「地球貢献型リーダー」なのではないでしょうか。

ブリッジコミュニケーションを支える3つの視点

ブリッジコミュニケーションは単なる相互理解ではなく、異質なものを「つなぎ」、新たな動きを「つくる」ためのコミュニケーションです。これに重要な力の1つが「レンジの調整」だと考えています。レンジとは「幅」のことです。研究では基本的に専門性をギュッと深めるのでレンジがぐっと狭くなります。一方、社会の中で何かを実践する時には広い視点で物事を捉えて思考するプロセスが欠かせません。レンジが広いだけでは誰もが思いつくような活動になるので、時にはぐっとレンジを狭めて専門性を深めなければいけません。多少の行き来はあると思いますが、研究者のような深いレンジと経営者のような広いレンジを縦横無尽に行き来して活動できる人は非常に少ないと思います。

分野をまたいで学ぶ学際的な人材の育成は、最近の大学でも始まっていますが、ただ幅を広げるだけでは「つなげる」「つくる」は起こりません。そこに自分の「コア」、つまり好奇心とか使命感とか、そういったものが両者の中心にないと融合がおこらないのです。単なる情報伝達にとどまらず、人と人がリアルに接触して、情熱を交換して、伝播していくような、もっと人間臭い、熱を持ったコミュニケーションができて初めて何かが動き出します。この「レンジ」と「コア」の上に表現力や技術・専門性といった「スキル」が揃って初めて圧倒的な発想や行動につながると信じています。

ブリッジコミュニケーションは起業家やトップリーダーに限らず、誰もが身につけられる力です。実際にリバネスユニバーシティーに参加した企業社員の方がベンチャーや研究者の情熱と共鳴し、プロジェクトを構想して自社の役員に提案するような活動も次々と生まれてきています。私たちリバネスの強みは個々の「コア」を掘り起こし、研究者と経営者の「レンジ」を行き来しながら、世界を変える具体的な活動を生み出すパワーです。そこに「アカデミアと越えていく」という挑戦を新たに加え、これまで両極にあった知識の融合にチャレンジしていきます。

(構成・楠 晴奈)

 

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