リバネスユニバーシティーコンテンツ知識の集合体で「地球貢献型リーダーの育成」に挑む〜リバネスユニバーシティー構想、いよいよ社会実装へ〜

知識の集合体で「地球貢献型リーダーの育成」に挑む〜リバネスユニバーシティー構想、いよいよ社会実装へ〜

2022.03.09

ビジョンを語る3名の理事

本記事は冊子「人材応援」vol.15(2020年12月発行)より転載しております。
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『科学技術の発展と地球貢献を実現する』ために研究者は何ができるのか。そんな大きな問いを持った15名の大学生・大学院生が2001年にリバネスを創業した。不確実性が増した現代では、自身が属するコミュニティと外部の知識をブリッジできる人材を育て、また活かす組織でなければ生き残っていくことは難しい。2021年5月に開校するリバネスユニバーシティーは、リバネスが設立より開発・実施してきた人材育成プログラムのノウハウの全てを投入し、新しい事を仕掛ける人材が育ち、共に学ぶ新しい場を提供する。発足にあたり、構想に至った背景や、育成する人材像について理事に就任する3名に話を伺った。

サイエンスブリッジコミュニケーションを実践する

サイエンスブリッジコミュニケー ションは、常にリバネスのビジネス開発と共にあった。リバネスの社員は、サイエンスとビジネスをつなぐ架け橋となる人材「サイエンスブリッジコミュニケーター®」として、社会の本質的な課題を発見し、大学や研究機関のサイエンスを学校、大企業、中小企業、町工場等のあらゆる異分野の現場にブリッジすることで、新しい知識を製造してきた。各パートナーとは年間300本以上にも及ぶプロジェクトを通して、課題発見と解決のプロセスを共にする密な関係性を築いている。

その結果として形成されたのが、知識を共有するネットワーク『知識プラットフォーム』だ。今では、300 社の大企業・地域中核企業、300校の大学、1,000社のベンチャー、3,000 名の若手研究者、そして2,000名の学校教員がこのプラットフォームの中で日々知識を交換し、新たな知識の製造に寄与している。「言うまでもなく、ネットワークだけではビジネスは生まれない。相手と意思・知識を相互に交通させるために、自分と相手の間に「橋」をかけるブリッ ジコミュニケーションが重要だ」とリバネスのグループCEOであり、リバネスユニバーシティーの発起人である丸幸弘は構想を語った。

21世紀はどんなリーダーやマネージャーが必要になるのか

リバネス発足当時、子どもの理科離れは科学技術立国・日本にとって大きな課題であったことを研究の最前線にいたメンバー達は敏感に感じていた。専門家と一般の方との知識・ 認識の差は大きく、遺伝子組換え食品や、クローン羊のドリーなど先端技術に対する漠然とした不安感が社会に存在したことを記憶している方も多いだろう。そこで、次代を担う子ども達へ「サイエンスとテクノロジーをわかりやすく伝える」ことで、科学技術への興味関心を引き起こし、中長期的に日本の課題解決を目指す、世界で初めての出前実験教室を開発した。

しかし、当時研究者の卵であった創業メンバーは、プロの教育者ではなく、学校現場についての知識も乏しい。そんな若い研究者たちが、受験に関係ない先端科学技術のプログラムを授業に導入することに対して、先生方から厳しい意見をもらうこともあった。それでも諦めることなく、日本の課題を解決したいという創業メンバーの熱を伝え、先生方からも教育現場の課題を教えてもらいながら何度もディスカションを重ねた。結果、学校や生徒が本当に必要なプログラムを構築するに至り、今では多数の民間企業も参加する科学教育活動へと広がっていった。コミュニケーションによって「サイエンスとテクノロジーをわかりやすく伝える」 がビジネスへと昇華したのだ。このノウハウはサイエンスブリッジコミュニケーションと名付けられ、この能力を身につけたリーダーが増えれば、異分野の企業間の連携や、アカデミアの研究者との共同研究、海外政府とのプロジェクトが推進される。

リバネス内では入社するとすぐに、独自で開発した『サイエンスブリッジリーダー育成講座』を受け、必要不可欠な素養のトレーニングを積む。さらに複数のビジネスを同時に推進するための『サイエンスブリッジマネージャー育成講座』のカリキュラムも開発した。これらのノウハウはリバネスユニ バーシティーでの共通科目として受講者に展開される予定だ。「所属の壁、分野の壁、国境の壁という分断がより大きくなっている時代だからこそ、 リバネスのサイエンスブリッジコミュニケーションを学びたいという声が飛躍的に増えている」と、丸はリバネスが構築してきた人材育成系が社会に求められている機運を感じている。

高まるデザイナーとプロデューサーの価値

今回の壮大な構想では、研究者であり、かつ産業界でもトップを経験した人材が旗を振り、新しい仕組みを世の中に構築していかなければならない。そこで、丸よりオファーをだし、リバネスユニバーシティーの理事長を快く引き受けてくれたのが、元協和キリン代表取締役会長の花井陳雄だ。「今回のプログラムは丸さんの構想をさらに一歩進めて、ビジネスを一から創るデザイナーとプロデューサー人材の育成にチャレンジしたい」と語る。デザイナーとは、世界に散在するディープイシューを発掘し、それを解決するテクノロジーを集め、プロジェクトを構築し、推進力となる人材である。「社外とブリッジできるだけでなく、自社内の異なる価値観をもったトップ層、特にR&Dと経営企画部長との両方とコミュニケーションをとり、サイエンスとビジネスをブリッジする人材でなければならない」と加えた。

そして、複数のデザイナーとコミュニケーションし、ビジネス構築に必要な資金や人材を集め、一から事業を創ることができる人材がプロデューサーだ。資金獲得やチーム形成のために人事的な動きも必要になるため、プロデューサーは「社内の役職と関係なく、経営者と対等な立場で話すことができる存在でなければならない」と花井は語る。これまでアウトローな自由人として捉えられることもあったデザイナーやプロデューサーこそが、所属や立場の間を自由自在に行き来して、世界を変えるビジネスを産みだせるのではないだろうか。 しかし、デザイナーもプロデューサーも自然発生的には生まれない。まだ世界でも前例がない人材育成系を立ちあげるチャレンジが始まるのだ。

働くに直結するcertificateを発行する

元ベネッセホールディングスで長年に渡り教育開発を手がけてきた副理事長の森安康雄は、「リバネスユニバーシティーでは一定の講座を修了した際に独自のcertificate を出したい」とGoogleや欧米の企業が始めている学位とは別のmicro certificate の形を作るべきだと考えている。学んだという事実は、社会人のキャリア形成にポジティブに働く必須の要素となるべきである。誰が教える何の講座で学んだのか、LinkedInのように個が発信するメディアに表示することで、個の信用が上がる時代だからこそ効果的なはずだ。「外部の講座でいくつも講師をしてきたが、自分の教え子同士が講座修了後も繋がり続けるような学びの場があると、 新しいプロジェクトが生まれやすい」と自身の経験を振り返る。講師と生徒、生徒同士の関係が可視化されることで、社会人にとっては所属組織での仕事にも繋がるはずだ。

また、教える側にも同様のインセンティブが働く。既存の大学の教授陣がリバネスユニバーシティーで講座を展開すれば、産業界に教え子ができ、産学連携が強力に推進される。どんな分野の人材を何人育てたかを記録できるようにすれば、ビジネスへの貢献という新しい指標を大学教員に付与することもできるのだ。さらに森安は、「働くということを積極的に学ぶ意欲のある大学生や大学院生にとってもcertificate は今までにない直接的な産業界へのパスポートになり得る」と期待を寄せる。あらゆる企業人材、大学の研究者、さらには学生の参画が可能な唯一の学びの場が実現する。

<対談者経歴>

丸 幸弘
株式会社リバネス 代表取締役 グループCEO
リバネスユニバーシティー 発起人・理事
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻 博士課程修了、博士(農学)。大学院在学中に理工系学 生のみでリバネスを設立。日本初「最先端科学の出前 実験教室」をビジネス化。大学・地域に眠る経営資源や 技術を組み合せて新事業のタネを生み出す「知識製造 業」を営み、世界の知を集めるインフラ「知識プラット フォーム」を通じて、200以上のプロジェクトを進行させる。ユーグレナなど多数のベンチャー企業の立ち上げにも携わるイノベーター。

 

花井 陳雄
株式会社リバネスキャピタル 取締役会長
リバネスユニバーシティー 理事長
1976年協和発酵工業入社後、抗体医薬の研究開発における第一人者として活躍。2003年には、自らが開発した抗体医薬関連の技術導出のため、米国BioWa社を設立、社長に就任して会社運営を担った。協和発酵キリン発足後は開発本部長として数多くの製品開発を指揮、2012年に代表取締役社長に就任し、 自身が創製・開発に関わった各製品の上市を果たすとともに、国内外大手製薬企業との提携や英国での M&Aも実現。2018年代表取締役会長、2019年取締役会長に就任、2020年3月に退任し、同年5月よりリバネスキャピタル取締役に就任。

 

森安 康雄
株式会社リバネスキャピタル 取締役
リバネスユニバーシティー 副理事長
元ベネッセホールディングスEdTech Lab 部長。ベネッセ在職中は30年以上にわたりデジタル教育事業開発を中心とした国内外の関連業務をリードし、Udemyの日本導入などR&Dから事業化までのプロセスに数多く関わった。2016年11月ベネッセ退職。2017年2 月にリバネスに第三新卒第一号として入社し、教育開発事業、人材開発事業を担当。同時に教育総合研究セ ンター主席研究員として自己効力感開発に繋がる「ワクワク」研究に取り組んでいる。2020年5月よりリバネスキャピタル取締役に就任。

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