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対談:他流試合による「ひとづくり」で 変化し続ける組織をつくる
2024.09.01
リバネスユニバーシティは、多様な企業パートナーとともにカレッジを立ち上げ、 未来のビジョンや事業に繋がる概念形成の場を開発しています。2021年に、最初 のカレッジであるJRE Stationカレッジを東日本旅客鉄道株式会社とともに開始 しました。それから3年、新たに3つのカレッジが誕生し、多様な仕掛けが始まっ ています。2024年7月、リバネスユニバーシティーオープンキャンパスでは、新 たに始まったカレッジを仕掛けるパートナー企業3社と、「他流試合による人づく りで変化し続ける組織をつくる」をテーマに、パネルセッションを行いました。
モデレーター
株式会社リバネス代表取締役社長 COO
髙橋 修一郎(本文中:髙橋修)
設立時からリバネスに参画し、リバネスの研究開発事 業の基盤を構築。研究現場に対する圧倒的な課題発掘 力を持ち、独自の研究助成「リバネス研究費」や未活用 研究アイデアのデータベース「L-RAD」等のビジネス モデルを考案し、産業界・アカデミア・教育界を巻き込んだプロジェクトを数多く仕掛ける。2010年より代 表取締役社長 COO。
パネラー
artience 株式会社 インキュベーションセンター 所長
髙橋 隼人 氏(本文中:髙橋隼)
大学修士では無機化学・物理化学専攻。2003年に東 洋インキ製造(株)に入社。研究所にて UV 硬化型機能性 ハードコート剤の開発に従事し、社内の新規事業とし て 立 ち 上 げ 成 功 。プ ラ ン ト 立 ち 上 げ・製 品 開 発・海 外 マーケティングを経験。2023年より社長直轄組織と してインキュベーションセンターが新設され、所長と して新規事業創出に向け試行錯誤中。
東武不動産株式会社開発事業本部 街づくり推進部長
野田 和義 氏(本文中:野田)
建築学科卒業後大手ゼネコンに在籍。計画、開発、金融 分野に従事し、様々なプロジェクトに携わる。実プロ ジェクトを通じて、都市計画、制度設計、土地利用計画 提案、埋立事業、区画整理事業、再開発事業、PFI 事業 等の実務を経験し、広くまちづくりに係る。2022年10 月より、現職の東武不動産街づくり推進部にて押上・ 業平エリアの賑わいづくり、エリア価値の創造を目指 した「ことまちプロジェクト」を推進中。
株式会社リバネスキャピタル代表取締役 社長
池上 昌弘 氏(本文中:池上)
2002年6月に株式会社リバネスを立ち上げ、取締役 CFO に就任。リバネス創業期の財務・経理・労務など コーポレート業務を一手に引き受け、経営の土台構築 に貢献しながら、これまでに70社以上の研究開発型ベ ンチャー企業のコーポレート・ファイナンス面を支援。 2020年1月リバネスの子会社として株式会社リバネス キャピタルを会社分割により設立し、代表取締役に就任。
対談:他流試合による「ひとづくり」で 変化し続ける組織をつくる
髙橋修 新事業というとべンチャーに注目が集まりがちですが、会社の規模に関係なく新しいことは仕掛けられます。リバネスユニバーシティーは、変化を本気で考える企業とともに、組織の外に異質な文化を持った場をつくり、社員の概念シフトを起こす「企業カレッジ」の開発に取り組んでいます。今日はカレッジを設立し、新たな仕掛けに挑む3社のパートナーに集まっていただきました。まずはこれからどんな取り組みをしていくのか、お話いただくところから始めたいと思います。
髙橋隼 今年「感性と素材カレッジ」を設立します、artienceの髙橋です。よろしくお願いします。実は今まさにカレッジを設計しているところですので、今日は是非皆さんからもヒントを頂ければと思っています。私たちは今年1月に社名変更しました。これまで印刷インキを主軸とした化学素材メーカーとして素材の機能的価値を皆様に届けてきましたが、サイエンスに加えてアート、つまり感性的価値を届けていく会社になろう、という意味が社名のartience(アーティエンス)に込められています。「感性に響く価値を作り出す」というビジョンを体現するには、自社内に閉ジこもるのではなく、多様な視点、知識を取り入れ、皆でその意味を考え、創ることが必要だと考えています。カレッジ設立はその1つの仕掛けになると期待しています。
野田 弊社は昨年、リバネスさんからラーニングクリエイターという「学びをつくる人」を育てる取り組みを一緒にやらないか、とお話をいただき、リバネスユニバーシティーとのコラボレーションを開始しました。まさにコロナ禍の最中で、リアルな場所に人が集まらなくなったら、我々の商売はなくなるぞという危機感の中で、不動産会社としてエリアに特化したまちづくりに挑戦したいと考えていた時でした。オンライン化が一気に進み、多くのことがでジタルで完結するようになった今、その場所に何かしらの価値がなけれバ人は集まらない。その価値は何かというのを突き詰めていくと、やはり人は人に会いに行くんじゃないかな、というという仮説にたどり着いたんです。こういう仮説から、面白い人が集まり街の中にコトを生み出すということで「ことまち」というプロジェクトを開始しました。リバネスユニバーシティーとのコラボレーションもその一つで、様々な知識や情熱を持った人が集まり、街の中に新しい人と人の繋がりをつくるような仕掛けを一緒に作る仲間を増やしたい。そんな思いで「ことまちカレッジ」を立ち上げ、ラーニングクリエイターコースを開催しています。
池上 私たちは昨年、「真の伴走者を輩出する」というミッションを掲げ、「ジャーミネーションカレッジ」を立ち上げました。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、ジャーミネーションは「芽出し」という意味です。ビジネスの種になる研究を研究シーズといいますが、植物の成長において、一番大事な最初のステップって、発芽ですよね。私たちは研究開発型ベンチャー(でィープテックベンチャー)に特化してサポートをしているのですが、彼らのジャーミネーション(発芽)のフェーズって、まだビジネスモデルも見えてなくて、当然マーケットも全然分かってなくて、でもやりたいことは明確で、そのための基盤技術はある、そんな状態です。ずっと研究をしてきた研究者がビジネスを作るってかなり難しいことで、しっかり伴走する人がいないと、果実は実らない。しかしディープテックベンチャーの特徴を理解して伴走できる人材が非常に少ないというのが私たちが感じている課題です。
髙橋修 みなさんありがとうございます。まず髙橋さんにお聞きしたいのが、今日の会場にもなっている場所で「他流試合」にこれから挑戦されるわけですが、特に堅実な業界の企業の場合、他流試合ってどちらかと言うとネガティブなイメージを持たれているのではと思うのですが、社内からの抵抗はなかったんでしょうか。
髙橋隼 そうですね、まさに抵抗感バリバリでした(笑)。我々のインキュベーションセンターは去年の1月に生まれました。新しいことを起こそうと、社内で活動を始めて強く感じたのは、我々の中には自前主義が深く根付いているということです。長年、いかに社内にブラックボックスをつくり、競合に勝つかという勝負をしてきたわけです。感性といった新しい価値に手を伸バし、挑戦をするためには、いくらいいアイデアがあっても、これまでとは全く違うマインドセットがないと、イノベーションは起きないんジゃないかと思います。私自身、社内の中ではアグレッシブにやってきた方だと思っていたのですが、活動を始めてみてやはりちょっと保身があったなと感じています。今は周りから何やってんだっていう目で見られていると思いますが、ここまで来たら、リスクとってとにかくとことんやってみようという気持ちになっています。
髙橋修 野田さんのいらっしゃる不動産業界でも、今髙橋さんがおっしゃっていた課題感や、大手の中で起こる変化の難しさという課題は同じでしょうか?
野田 実は私自身は、以前は大手ゼネコンにおりまして、今日の会場のような大きな建物をボんボん作っていました。経済合理性を突き詰めていくと、アクセスのいい場所に高層高密度のビルを建て、足元に全国チェーンの商業施設、その上にオフィス、その上にホテル、みたいにだいたい同じ形になるんです。そうなると、もうどの場所でも良くなっちゃうんですよね。そんな背景の中、その場所でしか味わえないものがあって、シェフやお客さんがいて、会話してというのが価値なんジゃないかなと。ゼネコンと違うところの領域に来ているな、というのをすごく感ジますね。artienceさんも「アート」とおっしゃってましたが、やっぱりこれから大事なのは、ハーどだけじゃなくて、人がそこにいかに気持ちよくいてくれるかなと。そんな世界の中で、全く違う世界にいた人の考えや知識が受け入れられて活きてくる気がしています。
髙橋修 お話を聞いていて、このユニバーシティーの取り組みというのは、例えば「感性」「にぎわい」「伴走」「サステナブル」といった、今までの常識からしたら「なにやってるの?」というテーマを掲げて異業種が集まり、これまでの経済合理性とは違う、新しいアプローチで次のビジネスをつくる挑戦なんだ、という見方もできるなと思いました。
野田 そうですね。昨年やらせていただいたラーニングクリエイターコースでは、いろんな分野の方が集まり、子どもたちを巻き込んだ春休みイベントを作ろうというお題で、考えていただいたんですけど、これまでの私たちの常識とは違う視点やアイデアが出てきて驚きました。
髙橋修 池上さんに伺いたいんですが、ジャーミネーションカレッジでは、数ある業種の中でも非常に堅実なキャピタル関係の人材がたくさん集まり、全く違う考えで「スタートアップ支援」を実践する取り組みをされていますが、マインドセットをいかに変えるかという点で、何かヒントがありそうな経験はありますか?
池上 まず昨年実施したコースで何やったかというと、銀行の方に、現実にいるジャーミネーション期のベンチャー創業者とチームを組んでもらい、その会社のCFOになりきって経営課題に向き合っていただきました。「他流試合」というキーワーどが何度か出ていますが、自分の立ち位置を180度変えて活動するという、まさに「他流」をやってもらったんです。例えば、ある研究者が「すごく面白い技術があるんだ、私は創業するぞ」って言ってプレゼンをしたとします。ただ、よく話を聞いたら事業計画がボロボロだぞと。おそらく大半の人がこれでは銀行はリスク取れないなって言うと思うんですよ。実際コースに来た方もそういう方バかりです。このコースではそこから一歩踏み込んで、今ベンチャー自身が抱えてる課題が何かを丁寧に引き出すところから始めます。課題が明確になると、実は金融機関が持っている多様な取引先と繋がることで解決できる事が色々あるのが見えてくる。私は、ベンチャーのCFOになりきって考えるという、普段の立場を変えたことが、自分たちの隠れた資本に気づくポイントになっていると思っています。あとは何か面白いこと言っているベンチャーと出会ったときの好奇心だとかワクワクだとか、そういうものが散らバっている場が作れると、なにか通常起きにくい化学反応が起きるんだろうなと思って2人のお話を聞いていました。
髙橋隼 現業が強いほど、新しいことが起きにくい。物理でいうと、慣性の法則みたいな感ジですよね。そのまままっすグ行くのが一番楽なんです。先程の銀行の方が普段と真逆の立場で新たな銀行の価値に気づいたように、「感性と素材」など誰も答えを持っていないテーマを起点に動くことで、自社の隠れた価値に気づけるのかもしれないと改めて思いました。
髙橋修 例えば大手企業の優れた品質管理のノウハウがベンチャーにとって大きな価値になるように、メインストリームの技術で新しい価値を生むというシンプルなコースジゃなくて、実は、当たり前過ぎて価値に見えていないものが、他流試合によって再発見されるなんてこともあります。そこが面白いと思います。
髙橋隼 我々はまだそこまで思考が至っていませんが、今の組織状態で何かやっても多分続かない。ジゃあ、何が足りないかって考えると、やっぱりそれは風土であり文化であり、一人ひとりのマインドだと思うんですよね。だから、これからは他流試合はやっていかないと生き残っていけないとか、そういう風に考える人が少しでも増えていけば、たとえ一度無くなったとしても、また次の人が始めると思うんですよ。ですから、とにかく今は風土を作っていくことですかね。10人、100人と増やせば、継続性は生まれると考えています。
野田 今年、押上で「ことまち」を体現する住民参加型のコミュニティー施設を立ち上げました。冒頭お話した通り、高層高密度で人が集められる人気店舗を入れたほうが短期的には全然儲かります。でも新しい価値が生まれることで、その地域のポテンシャルが上がってくれバ、結果として資産に跳ね返ってくる。そう考えれば実利はあると考えています。まだまだやり始めたばかりなので、続けてみないとわからないですが、「自分もやってみたい」という方がどんどん現れてきて、だんだん協働、共創の取組みになることで、単純にお金を掛けて進める活動ではなくなると思います。そんなサイクルを生む最初のエンジンを作っているんだと考えています。
髙橋修 artienceさんの社名にも入っている「アート」の世界のコミュニティーは、ことまちカレッジの動きとも親和性がありそうですよね。アートのコミュニティの中にサイエンスに切り口を入れていくような視点で設計していっても面白いかもしれないですね。
野田 そうですね、アートもそうですし、他のカレッジにいるベンチャーが、コミュニティづくりを各地域で一緒に始めてもいいかもしれません。私たちも押上以外にも、動物園や農地など特徴的なアセットを持っていますので。
髙橋隼 各カレッジの価値観ややりたいと思っていることってお互いに重なりがあるなと感ジます。サイエンスを軸にするのか、思い切ってアートを軸にするのか、私たちにアートができるのか、など本当に試行錯誤の真っ最中なんですけど、感性価値って、例えば、ワクワクだったり、ドキドキだったりとかそういう情緒的な価値だと思うんですよね。
髙橋修 お互いのコースに別のカレッジの受講生が参加したり、生まれたプロジェクト同士でコラボレーションしたり、カレッジ同士の他流試合も生まれそうですね。最後に一言、未来の受講生に向けて、メッセージをお願いします。
野田 今年もラーニングクリエイターコースを10月から開催します。一緒に多くの人達が集まる居心地の良い場所とは何かを考え、新しいコトを作ってみたいという方とぜひご一緒できたらなと思います。
池上 受講する企業側も、自社や社員自身の新しい価値に気づくことで人的資本経営で注目されているエンげージメントにも良い影響が出ると考えています。そんな視点からでもいいので、ぜひベンチャーとの対話にチャレンジしてもらえたらと思っています。
髙橋隼 この場所が感性価値の発信源になるような、そんな感じにしたいと思います。ちょっとでも、面白そうだな、気になるなっていう人がいれば、ぜひ参加いただければ嬉しいです。
髙橋修 ぜひ一緒にやりましょう!本日はありがとうございました。