受講者の声:「熱」を起点に、変化を生み出す一歩を描く(菅公学生服 川井正則さん)
2026.04.09

「熱」を起点に、変化を生み出す一歩を描く
菅公学生服株式会社
川井 正則さん
※参加コース:ブリッジコミュニケーションコース
1854年(安政元年)創業の菅公学生服株式会社は、現在15000校以上の制服を手掛け、国産衣料品の約8%を製造する学生服・スクールウェアの老舗企業として知られている。そんな伝統のある企業で新商品開発に携わる川井正則さんは、異分野との掛け算で事業の可能性を広げる挑戦を続けている。社会人や研究者が集うブリッジコミュニケーションコースへの参加を通じて、重要なのは特別なスキルではなく“熱”にあると気づいた。
中高生支援への共感から始まった挑戦
中高生の制服や体操服を手がける菅公学生服で商品開発を担当する川井さん。少子高齢化の進行とともに、業界全体が新たな事業の形を模索している分野だ。「今ある強みを生かしながら、どの距離感で新しいことを始めるべきなのか」。近すぎても遠すぎても成果につながらない。そのバランスに悩みながら、試行錯誤していたという。そんな折、上司の紹介で知ったのが、異分野の社会人や研究者が集うこのコースだった。「中高生の育成支援を原点にしていると聞き、うちの制服づくりと通じるものを感じました。教育や成長を支えるという点で、とても親和性が高いと思ったんです」。繊維業界の外に出る機会が少ない事に課題感があり、異分野の人とも積極的に交流しようと試みてもいた。そこで、日常では話すことのない理系の研究者の視点に触れることで、今までにない新しい視点を得られるかもしれないと考え、川井さんは一歩を踏み出した。
新しいことにも大切な 仕事を楽しむ“熱”
研修の中で最も印象に残ったのは、「熱が必要だ」という言葉だった。川井さん自身はもともと、仕事を前向きに楽しむタイプだが、時代の流れの中で、仕事への向き合い方に迷いが生まれていたという。「最近はどうしても“やりすぎないように”という空気もあります。でも、やっぱり熱を持って最後までやり切る瞬間は、時には必要なんです。この研修でその大切さを再確認できたのは大きかったです」。今後は、若手社員が同じように仕事を楽しむ“熱”を持てる環境をどうつくるかが川井さんの次の挑戦だ。「せっかく選んだ会社だからこそ、仕事の中に楽しさを見つけてほしい。それができれば、自分の力をもっと発揮できるはず」。経験に裏打ちされたその言葉には、静かな情熱がにじんでいる。
発想と現実の間で見つけた、自社の可能性
ブリッジコミュニケーションコースに集まる、多様なバックグラウンドの参加者の自由な発想に触れる中で、川井さんは自分が随分と現実寄りに物事を考えてしまっていたことに気づいたという。一方で、その現実感を保ちながらも、突拍子もないアイデアを面白がりながら柔軟に受け止め、自らの熱意を重ねて実現可能な形に近づけていくバランス感覚は川井さんの持ち味でもあった。川井さんは今後も、新規事業の方向性を探っていく予定だ。今回の取材の中では、制服づくりで蓄積した中高生の体格データが、教育や健康分野にも応用できる可能性があるのではという話題に花が咲いた。身近なものに見出した新たな可能性について語る川井さんはいきいきとしていた。「全く知らない業界や専門の人と名刺交換したときに、『こんなことができるのでは』という発想を描けるかが大事だと思う」と語る川井さん。自分はまだまだ、と謙虚な様子ではあったが、新しいものを受け入れる柔軟さと、仕事への“熱”を出発点に確かな変化を生み出していくはずだ。
(文・重永 美由希)